木構造

 

 

□主テーマ

耐震パネルの開発に関する研究

 

□研究期間

2000~

 

□研究チーム

中園+佐藤拓生(M1)

研究の背景と目的

「木造構法」では、既存の伝統的木造住宅を再生する際に、適切な耐震補強を行うために、伝統的木造住宅の構造部材やその接合部などの構造性能を把握する研究を行っています。
また、本研究室オリジナルの工法の落し込み二重板壁の研究も行っています。この落し込み二重板壁を用いれば、木造軸組工法住宅を設計する際に、複数の仕様の壁でバランスをくずすことなく一つの工法で、また写真のような内部に耐力壁を配することなく広々とした空間を設けることができるようになります。

 

       

             落し込み二重板壁を用いた軸組構法住宅

 

2007 木造仕口接合部の引張試験

既存の研究で仕口接合部の最終的な破壊において、ほぞと込栓が破壊するメカニズムは推定することが可能になりましたが、土台の破壊に関してはどの面にどのような力が働いているかが明確にされていません。
そこで本実験では、土台の割裂強度を明らかにするために、ほぞと込栓を鋼材に変えて実験を行いました。その結果、土台材料のめり込み強度の約2倍の引っ張り力で土台が割裂することが推定できることがわかりました。

 

              

                         割裂実験

 

2006 落とし込み二重板壁の耐力性能試験
2004年の研究に引き続き、2005年度の研究において改良した長ほぞ込栓と板同士をダボで接合したパネルを組み合わせて、落とし込み二重板壁の耐力性能試験と、その耐力評価を行いました。
その結果、壁倍率が1.6から2.5程度が得られました。また剛性・耐力算定は可能であることがわかりました。

 

                 

                     落し込み二重板壁

 

2005 木造仕口接合部の引張試験
2003年度の、半間幅落し込み二重板壁実験の結果、全ての試験体において柱脚部の長ほぞ込み栓の破壊が生じ、壁板の持つ耐力を十分に引き出せていなかったと考え、柱脚部長ほぞ差込栓の実験を行なおうと考えました。
本実験では、一般的な長ほぞ込み栓を改良し、耐力を向上させることを目的とし、長ほぞ込栓を改良すれば、金物と同等の接合部耐力を有するということが確認できました。今後は、破壊性状や耐力評価式の検討を行いたいと考えています。

 

             

              柱脚部仕口(長ほぞ込み栓差し)

 

2004 木造民家解体古材の老朽度調査

伝統的木造住宅の解体古材を試験体として、曲げ強度試験(写真左)・超音波伝播速度測定(写真右)・穿孔試験を行いました。試験結果から曲げヤング係数を算出して比較しました。
 曲げ強度試験で得られたデータと超音波伝播速度測定から得られたデータの間に相関関係が見られる可能性があることが確認できました。また、上記の試験における老朽した材と呼べる閾値が、おおよそ確認できました。

 

   

         曲げ強度試験        超音波伝播速度測定(シルバテスト)

 

2004 伝統的木造住宅の水平加力試験

山口県山口市にある農家型伝統的木造住宅に対して、常時微動測定、人力加振試験、また、今回は隣接納屋を反力として利用して水平加力試験を行いました。(共同研究組織:東京大学大学院工学系研究科建築学専攻坂本研究室・東京都立大学(現:首都大学東京)大学院工学研究科建築学専攻藤田研究室・山口県建築士会)
 最大水平耐力は45kNで、その時の変形角は大黒柱柱頭で1/35radでした。また、加力を続けて0.09radまで加力しても耐力の低下は認められませんでした。また写真右のような柱頭部の破壊状況が確認できました。

 

 

     大変形域加力後家屋形状            柱頭部破壊形状

 

2004 落とし込み二重板壁の耐力性能試験

昨年の実験に引き続いて、2004年は一間幅の落し込み二重板壁を3パターン作成し、これらに対して水平加力試験を行い耐力変形性能を明らかにしました。本年度は昨年の実験から柱脚部が先行破壊してしまうことを教訓に、土台の高さ寸法を上げ、また梁と土台をボルトで連結させて行いました。

実験結果から壁板の高さが最も高いものが1番高い剛性を示すことが確認できました。

 

       

   落し込み二重板壁(一間幅)       柱脚部浮き上がり形状

 

2003 落とし込み二重板壁の耐力性能試験
落し込み二重板壁とは、柱間に二枚のスギ板を落としこんでいく構法で、壁板の間に断熱材を挟むことで、下地材としてはもちろん、仕上げ材としても活用できます。また、通常の落し込み板壁に対して板を2枚にしたことにより、壁の剛性を高めることができると考えられます。
よって、この半間幅の落し込み二重板壁を五パターン作成し、これらに対して水平加力試験を行い耐力変形性能を明らかにしました。この実験結果から、最も実用的なパターンで壁倍率3.85を示すことが確認できました。

 

       

    落し込み二重板壁(半間幅)        柱脚部浮き上がり形状
  

2001 差鴨居の曲げせん断試験

伝統的木造住宅で多く見られる差鴨居の二方差し、四方差しの試験体を新材、古材をそれぞれ用いて計12体作成し、柱と差鴨居の仕口接合部の曲げせん断試験を行いました。古材は江戸時代末期に建設された民家の柱、差鴨居を加工したものです。また仕口は長ほぞ込み栓として、そのうち込み栓を上部につけたものを3体作成しました。
 試験結果より、古材と新材では古材の剛性の方が大きい、二方差しと四方差しでは初期剛性は四方差しの方が高いが降伏時には差が認められない、込み栓下付けと上付けでは下付けの方が負方向加力時において荷重が大きい傾向にあり上付けの方が正方向加力時においてやや荷重が大きいことが明らかとなりました。また、これらの実験値と計算値が一致することが確認されました。

 

      

         実験装置               終局時の仕口接合部

 

2001 木造住宅の常時微動測定

山口県内に現存する民家のうち、伝統的木造住宅15棟、在来軸組工法木造住宅14棟、鉄筋コンクリート住宅1棟の常時微動を測定しました。測定には写真右の速度計を地盤面、床面、小屋組高さにそれぞれ2個づつ設置しました。得られたデータから固有周期を算出し、立体解析を行いました。
 試験結果より、伝統的木造住宅の方が在来軸組工法住宅より固有周期が2倍長いことが分かりました。

 

   

     測定対象の伝統的木造住宅              速度計
   

2000 伝統的木造住宅の水平加力試験

山口県吉敷郡に移築された農家型伝統的木造住宅に対して、常時微動測定、自由振動試験、写真左の屋内設置型正負繰り返し水平加力装置を開発・使用して、水平加力試験を行いました。(共同研究組織:東京大学大学院工学系研究科建築学専攻坂本研究室・東京都立大学(現:首都大学東京)大学院工学研究科建築学専攻深尾研究室・山口県建築士会)
 最大水平耐力は7.02tfで、その時の変形角は大黒柱柱頭で1/31.6radでした。また写真右のような柱脚部の破壊状況が確認できました。これらの結果より開発した水平加力装置が建物の塑性域まで正しく加力することが出来ること、任意形状立体解析プログラムを使用して立体架構モデルから軸組の耐力変形性能を追えることが確認できました。

 

  

          加力装置                   柱脚部破壊形状