温熱環境
□主テーマ
伝統民家における断熱改修手法の研究
□研究期間
2001～
□研究チーム
中園・吉浦
研究の背景と目的
温熱環境では、伝統民家の室内で快適な生活環境を創り出すために研究を行っています。冬の伝統民家の室内はとても寒いので「伝統民家における断熱改修手法の研究」を研究の目的としています。
これまでには、籾殻を炭化させたものを断熱材として使用するための研究を行い、また伝統民家の室内温熱環境を把握するために、実験住宅において年間計測を行っています。現在では実験住宅の計測は２年間継続しています。
これからは「床暖房システムの伝統民家改修への採用効果」等に関して研究を予定しています。
太鼓張り障子による伝統民家の開口部断熱改修効果の検証（2007年度）
実験住宅食堂の開口部はペアガラスと障子を太鼓張りにすることで、断熱改修されています。２００７年は、断熱改修の効果を確かめるために実験を行いました。また、さんコープ河村邸においても実験を行いました。両実験の結果については、現在編集中です。
改修前 改修後
中空パイプ方式床暖房の伝統民家への敷設（2006年度）
研究テーマは「床暖房を使用した伝統民家の室内温熱環境改善」です。研究室では実際に改善効果を確かめるために、中空パイプ方式床暖房を伝統民家へ敷設しました。対象となった住宅は、山口市にある「さんコープ河村邸」です。
中空パイプ方式床暖房の敷設状況
温水式床暖房室内温度分布計測準備（2005年度）
右の写真は、現在建設中の「高田邸」に設置された床暖房による室内環境を計測するために、準備をした時の様子です。今見えている、床暖房パネルの上からコンクリートを流します。2005年度の研究計画は、伝統民家の室内熱環境改善計画の一環として、実験住宅の天井に断熱材を設置を行います。
計測の準備の様子(左 パネル設置の様子 右 温水の出入り口)
温水式床暖房の開発（2004年度）
2004年度に行った、温水式床暖房の開発では、右の写真にある「中空パイプ式床暖房」「ユニット型温水パネル」の性能を一般温水式床暖房と比較する実験をしました。実験の結果、二つの床暖房どちらとも、現在販売されている床暖房と同じ程度の暖房性能を持っていることが分かりました。
「中空パイプ式床暖房」は、温水パイプに熱の伝わりやすい銅パイプをつなげることで、床面全体を暖めるものです。「ユニット型温水パネル」は、断熱材と床暖房本体をユニットにすることで、施工しやすくしたものです。
「中空パイプ式床暖房(左)」と「ユニット型温水パネル(右)」の性能実験の様子
温水式床暖房の室内温度分布計測（2003年度）
2003年度には、「中空パイプ式床暖房」が実際に設置されている戸建住宅で、室内の温熱環境の計測を行いました。その計測の結果からは、床面から天井面までの室内温度の差が小さい、理想的な室内環境が出来ていることが分かりました。
中空パイプ式床暖房の設置の様子 垂直温度分布の計測の様子
伝統民家の室内熱環境改善計画（2002年度）
2002年度の「伝統民家の室内熱環境改善計画」では、伝統的な住宅の室内熱環境改善計画において、シミュレーション解析（ＳＭＡＳＨ）は、改修手法考案の上で有効な手段であることが実証できました。また右のグラフを見ると、シミュレーション解析と実測値との温度誤差がありますが、これは実際の建物との自然換気量の差による影響が大きいと考えられます。この研究からは、伝統的民家の断熱改修のポイントは各居室の鉛直方向を考察することが最も重要だと考え、天井部材、床部材の改修が効果的だと思われます。
実験住宅平面図 実測値とシュミレーションとの比較 (S:シュミレーション値)
籾殻充填木板パネルの開発（2001年度）
籾殻断熱材は調湿性もあり、人体に対して無害で、かつ環境においてリサイクル材にもなります。右の断面図が、籾殻断熱材の施工例を示しています。実験では、籾殻断熱材を設置した壁と、現在一般普及している、断熱材が設置されている壁の仕様との断熱性能の比較を行いました。その結果、籾殻断熱材は、一般断熱材と同等の断熱性能を持っていることが分かりました。
籾殻断熱材（黒く見えるのが炭ですよ）
籾殻断熱材施工例